高齢者の暮らしを支える年金も、一定額以上を受け取ると所得税がかかります。
日本年金機構から毎年届く「扶養親族等申告書」を提出すれば、天引きされる税額を圧縮することができます。 事例) 2ヶ月分で37万円の年金から所得税が約28,000円も差し引かれていた方が、年金機構に問い合わせをすると、提出した扶養親族等申告書がまだ処理されていなかったことが判明しました。 2ヶ月後の振込みの年金では税額が約1,500円に修正され、過去に差し引かれた所得税の大部分が還付されました。
この扶養親族等申告書を巡っては、2018年3月に、日本年金機構から委託された業者によるデータ入力ミスや処理の遅れが原因で、多くの年金受給者の税額が高めに計算された問題が明らかになりました。 扶養親族等申告書を提出していれば、最終的には損はしませんが、日本年金機構の発表では、未提出のまま高い税額を源泉徴収され続けている人が72万8,000人もいます。 この扶養親族等申告書は書き方がわかりにくいため、提出できなかった人も多い可能性があります。 申告書を提出しないと、所得税額の計算で不利になります。基礎控除や配偶者控除、公的年金控除などが適用されず、課税対象額が大きくなってしまう上、税率も約5%ではなく、2倍の約10%で計算されてしまいます。
また、扶養親族等申告書という紛らわしい名称にも注意しなくてはなりません。扶養する家族がいない人も、提出しないと基礎控除などが適用されず、税率も高くなるためです。 日本年金機構から申告書が送られてくるのは、年金額が65歳以上で年158万円以上、64歳以下で年108万円以上の人です。 この金額未満の場合や、遺族年金、障害年金だと所得税はかからないので送られてきません。届く人は受給者のおよそ4人に1人です。以前は10月頃に届いていましたが、2017年度より8月下旬の発送に変更となりました。
提出しなかった場合も、確定申告すれば払い過ぎた税金を取り戻すことができます。 年間の医療費が高額になるケースなど、毎年、確定申告している人だと、扶養親族等申告書を提出する必要はない、と感じるかもしれません。 ただ、2ヶ月に一度の年金額が1万円~2万円少ないことで、生活に響くケースもありますので、本来もらえる金額を最初から受け取るためにも、放置せずに毎年必ず提出することが大切です。
日本年金機構は、2018年4月、2018年分の申告書を一度も提出していない72万8,000人と、記入に不備があるなどして返送されたまま未提出となっている18万3,000人の計約91万人に、様式をわかりやすく見直して申告書を改めて再送しました。 所得税が余分に天引きされている人は、提出することにより、2ヶ月後の年金支給時に税額が修正されて払い過ぎた所得税も還付されます。 間に合わなかったとしても、次回以降の支給日に調整されます。 ただし、配偶者が扶養の対象になるかどうかチェックする必要があるなど、記入上のむずかしさは、以前のものと大きくは変わりません。
別紙の記入方法の説明を読んでもわからない場合は、最寄の年金事務所に相談に行くことをお勧めします。本人確認書類のほか、家族など代理人が行く場合には委任状も必要になります。 二度手間にならないように、事前に必要書類も問い合わせておくとよいでしょう。
|